D2CモデルのスタートアップがテレビCMを導入 事業価値を高めるマーケティングの新たな手札

D2CモデルのスタートアップがテレビCMを導入 事業価値を高めるマーケティングの新たな手札

デジタル時代もテレビCMはマーケティングの手法になる

―― 「NELL」のテレビCM導入以前のマーケティング戦略や課題を教えてください。

テレビCM放映以前は、デジタルマーケティングを大きな軸として行っていました。SNSで日々集まる、NELLマットレスを使用いただいているユーザーの声を活用し、人を介して製品の魅力を伝えることに注力してきましたね。売上は持続的に伸びていましたが、CPA(顧客獲得単価)を合わせながら劇的に拡大させるには適さない部分もあり、ドライブをかける手法を模索していました。

私たちは、寝具製品のマーケティングにおいてブランド認知が非常に重要な要素であると捉えています。一方で実際のユーザーの声を拾ってみると自分が使用するマットレスのブランドを把握していなかったり、あらかじめ購入するマットレスが決まっている人は極端に少なかったりします。買い替え頻度が少ないこともあり、人々が熱狂するブランドが少ないという状況。それならば、老舗ブランドがひしめく中でも、スタートアップである私たちも戦えるはずだ、ということで、大きなコストを投下しての認知獲得の施策の手法を増やしたいと探していたんです。

―― スタートアップかつD2C企業が、マーケティングにテレビCMを導入する事例はまだ少ない印象です。テレビCMを検討した背景をお聞かせください。

私たちのチームでは、「小さく、広く、細かく試し、手法を絞って大きく張ること」を基本方針としています。当社は社員10名以下の少数精鋭の会社です。人材の余力を考慮して効率化を求めると、デジタルマーケティングを深堀りする意思決定を行う場面がどうしても多くなります。しかし、これまでのチャネルだけでは拡げられないと感じていたので、手法を増やしたいという思いがありました。当社においては、マーケティング予算の一定割合を継続して認知獲得に使っていくことを、サービス拡大の初期段階で決断できていたことが良かったと思います。

近年の寝具業界は、海外ブランドの新規参入も相次いでいて、毎月のように新ブランドが立ち上がっている状況です。だからこそ、先駆けて認知獲得の手数を増やすことには意味があると思っていました。製品の品質に確かな自信を持っていたので、あとはどれだけユーザー層を最大化できるか。今後の新商品や新ブランドの展開を見据えて、早い段階で検証をスタートしたかった。そこで、自社サービスのCMにおいても結果を出されているノバセルに相談し、テレビCMを検討していきました。

決断につながる「やらない理由」をなくすコミュニケーション

―― ノバセルの提案する戦略やクリエイティブはどのようなものでしたか?

シミュレーション上はスタート時は赤字となる試算でしたが、調査分析の結果から、どの層にどんなメッセージを届けるべきか、どのように改善して伸ばしていくかを徹底的に話すことができたので、納得して決断できるものでした。

寝具選びでは購入前に頭を悩ませる方が多く、自社調査でも検討から購入までに2か月以上の時間を要している方が想定以上に存在するという結果も出ていました。15秒のテレビCMで記憶に残るようなクリエイティブにする必要があったので、当初はかなり慎重に検討をしていこうとしていました。僕らは伝えたいことがたくさんあるが故に、短い時間の中にメッセージを詰め込んでしまいがちで、競合と差別化できるものに終始してしまっていました。そんな僕らの要望を丁寧に取りまとめて形にしてくれました。

マットレスCMのクリエイティブは難易度が高いと予想していましたが、メッセージを絞りながら、「NELL」の特徴である「寝返りのしやすさ」「高密度のポケットコイル」「多層構造」をCGなどを駆使して、誰もがわかるように表現してくれました。競合のクリエイティブも分析した上で、勝ち筋を示す戦略になっていたのは非常にありがたかったですね。

―― ノバセルの担当者ともかなり時間をかけて、テレビCM導入について議論されたそうですね。

担当者の印象がとにかく強かったですね。提案のタイミングで、既に定量調査からセグメント分析、N1インタビューを行ってくれていて。契約前にも関わらず、綿密な戦略を提示してくれました。テレビCMを実施するまでに3か月の時間を要しましたが、初回提案から当社が決断するまで、担当者と10回以上は面談したと記憶しています。担当者からは、最後まで向き合って成果を出すことから逃げないという姿勢を感じ、信頼を置ける方だと思いました。

―― 2021年4月にノバセル導入を決断されましたが、最終的な決め手はどこにありましたか?

当社の「やらない理由」を潰してくれたというのが決断できたポイントだと思います。当初、テレビCMの効果を懐疑的に見ていたのもあり慎重に進めようと思っていました。これまで枠売りの営業や有名タレントを起用したCMの提案はありましたが、どんな提案も効果検証についてしっかり触れてくれるところがありませんでした。その点、ノバセルは費用対効果を可視化できる「運用型」という特徴もあり、従来のデジタルマーケティングの考え方や成功体験を引き継いだ上でスムーズに入れるので、当社にとっては受け入れやすいものでした。想定よりコストも低く、検証することができたんです。

特に、予算に対しての回収シミュレーションを提示いただき、テレビCMに慎重だった私たちが投資ジャッジできるようにしてもらえたことは大きかったですね。どのくらいの売上が見込まれ、初回のROASがどうなるか、そこからの改善による効果、といったシミュレーションが明確化されていました。最初は赤字になる試算でしたが、黒字転換するタイミングや最終的な着地が見えるものだったので、投資回収のイメージができた。結果として、早い段階で検証をスタートする意思決定ができましたね。

テレビCMは想定以上の売上や喜びを生み出した

―― 2021年12月から1月にかけて福岡でテレビCMがOAされましたが、反響や手応えはいかがでしたか?

福岡の放送は、赤字を前提とした実施でしたが蓋を開けてみれば、当初の想定に対して2倍以上の効果がありました。ユーザーの反応は良好で、TwitterなどのSNSでは既に使用する方々からの声も上がっていて、「NELL」が広く認知されることは、長年お付き合いいただいている既存ユーザーにとっても喜んでいただけることなのだと実感しましたね。また、私たちの製品を共同開発する工場が福岡にあるのですが、社員やその家族がCMを見て喜んでくれたということも聞き、当社のメンバーだけでなく、協力会社の皆さんにも誇りや自信が持てるような機会になったことも実施してよかった点です。

―― ノバセル導入によって、マーケティングの変化を感じましたか?

テレビCMの放送以降、協業の提案が一気に増えました。CMがブランディングにつながり、採用活動にも活きていて、企業やブランドとしての成長実感があります。

また、15秒で「NELL」の魅力を伝えられるコンテンツができたことで、オフラインイベントなどでも活用できるようになったのは嬉しいですね。昨年の福岡でのCM放映をきっかけとし、新しい機会が継続的に生まれたことで売上も伸長し続けているので、当社にとってTVCM実施の意思決定は英断だったと考えています。

―― テレビCMが御社にとって大事なマーケティングになったのですね。最後に、今後のテレビCMの活用をどのように考えているか教えてください。

まだ2エリアだけの実施なので検証段階ではありますが、効果を見ながらCMの放送エリアをさらに拡大していきたいと考えています。

D2Cでの寝具の購入が少しずつ一般化している中で、やはり「体験してみたい」という声は根強くあります。全国でポップアップショップを展開することも検討しているので、そのタイミングにエリア限定でテレビCMを放送するなど、当社の手札のひとつとしてよりライトにCMを活用していきたいと思っています。