そもそもテレビCMの役割とはいったい何なのでしょうか?テレビCMは商材を視聴者に認知させ、イメージアップを図るものです。つまり、顧客の関心を高め、購買に値する価値をつけるための広告です。テレビCMの役割を図で紹介します。
従来、テレビCMは上図の「テレビCMのリーチ(接触)」から「商材の認知」を目的として制作されていました。そのため、テレビCMの効果測定は、基本的にGRPを用いた「リーチ測定」や「認知度測定」が中心でした。これには、テレビCMが視聴者の購入行動に直結していたという背景があります。2015年にはGRPよりも正確に効果測定が可能なGAPの実証実験も始まりました。しかし、インターネットの発展により、テレビCMが視聴者の購入行動に与える影響は減少しました。多くの消費者が、購入前にWEBサイトで商品の詳細やレビューなどを調べるようになったためです。こうした変化により、テレビCMが上図の「内容理解」~「購入」に与えた効果を測定するための「問い合わせ数・売上数の比較」や「想定KPIと実績KPIの比較」なども広く使われるようになりました。また、現在のテレビCMの効果測定には、WEBとのクロスチャネル分析が欠かせません。テレビCM放映前後の指名検索数、WEBサイトへのアクセス数の増減のデータから、より正確な効果測定ができるようになったためです。また、WEB広告を利用したABテストで、高い成果を期待できるテレビCMを出稿できるようにもなりました。このように、テレビCMの効果測定法にはさまざまなものがあります。ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
テレビCMの基本的な効果測定法は、「リーチ測定」や「認知度測定」です。このリーチ数や認知度を計測する方法としてオーソドックスなのが、「GRP(Gross Rating Point)」です。最近では、GRPのほかにも「GAP(Gross Attention Point)」という新たな効果測定法が注目を集めています。その他の効果測定法として、マーケティングリサーチなども挙げられます。GRP、GAPそれぞれについて、詳しく見ていきましょう。
テレビCMの効果測定法として、もっとも用いられるGRP。Gross Rating Point(延べ視聴率)の略で、テレビCMを放映した期間内で、放送された番組(時間帯)ごと、地域ごとの世帯視聴率を合計した値です。具体的な計算例を紹介します。例)平均視聴率が5%のテレビ番組内に1本、8%の時間帯に2本、10%の番組に3本、テレビCMを流した時のGRP
5%×1本+8%×2本+10%×3本=51(GRP)
GRPの数値が高ければ高いほど、より多くの人が接触(リーチ)していると考えられてきました。目的が認知やリーチの場合、GRPがメイン指標になりGRPの数値が高いほどテレビCMのもたらす効果も高いと言われてきましたが、実は、GRPは確実なものではないことも指摘されています。たとえば、上記をご確認ください。ブランドX、ブランドYともに、同程度のGRPになるようにテレビCMを放映しています。ブランドXではGRPが視聴者の認知に寄与し、購買意欲を上げています。テレビCMが販売数の増加に大きく貢献したと言えるでしょう。しかし、ブランドYではテレビCM放映後も販売数の大きな増加は見られませんでした。同程度のGRPになるようにテレビCMを放映したにもかかわらず、なぜこのような差が生じたのでしょうか。実は、GRPには大きな弱点があります。前述したように、テレビCM中のみ離席したり、スマートフォンを見たりしている人がいるため、実際の接触(リーチ)数や認知とは差が生じてしまうのです。このGRPの弱点を補える効果測定法として注目されている新たな効果測定法が、「GAP」です。
続いて、GAPについて詳しく解説します。GAP(Gross Attention Point)とは?GAPは、Gross Attention Point(延べ注視率)の略称です。顔認証技術やセンサーカメラで、テレビ画面を注視している時間を秒単位で測定した数値で、2015年から実証実験が行われています。実証実験では以下の手法で放映された際に実際に視聴者がテレビの画面を見ていたかを測定しています。
テレビ番組を1秒注視→1GAPとしてカウント
テレビ番組を見ていない場合→GAPとしてカウントされない
実際にテレビCMを見ているかどうかが測れるため、GRPよりも確実な接触(リーチ)数を見られます。ただし、GRPもGAPもテレビCMが視聴者に与えた印象やその後の行動誘発について、はっきりと知ることができないのがデメリットです。
ここからは、GRP、GAP以外のリーチ数・認知度の効果測定法を紹介します。テレビCMの効果測定法として、認知度調査のためのマーケティングリサーチという手法があります。
昔は郵送によるアンケート調査が行われていましたが、現在はインターネットでのアンケート調査が一般的です。ブランディングのためのテレビCMであれば、マーケティングリサーチがもっとも有効な方法でしょう。
ただし、インターネット広告など、テレビCM以外の広告を同時に出稿している場合は正確に測定ができないため、効果測定時には注意が必要です。
テレビCMの発展的な効果測定法
続いて、下図における視聴者の「内容理解」~「購入」を目的としたテレビCMの効果測定法を紹介します。
商材の購入を目的としたテレビCMの効果測定法は、主に下記の2つです。
問い合わせ数・売上数の比較
想定KPIと実績KPIの比較
ひとつずつ詳しく説明します。
問い合わせ数・売上数の比較
テレビCMの放映前後で、商材に対する問い合わせ数(コールセンターの受電数など)や売上数を調査する方法です。GRPと合わせて検討されることがほとんどです。
ただし、テレビCM以外で同時期に広告を流している場合は、正確に測定ができないという弱点があります。
想定KPIと実績KPIの比較
KPIは、Key Performance Indicator(重要業績評価指標)の略で、目標の達成度合いを計測するための数値です。指標となるKPIを設定することで、目標に対する進捗や必要な作業を客観的に把握できます。テレビCMでKPIを設定する際は、テレビCM認知、ブランド認知、視聴者の購入意向が使われます。
ここからは実際のテレビCMの効果測定法を説明します。KPIの推定方法にはさまざまな方法がありますが、ノバセルでは放映エリア・非放映エリアの放映前のWEBサイトのセッション数、CV数と、非放映エリアの放映後のWEBサイトのセッション数、CV数から算出しています。
以下では訪問(セッション)数ベースで具体的に見て行きましょう。
────────────────────────────────────
放送した場合の効果=
実績KPI(実際に放送した場合の訪問数)-想定KPI(放送しなかった場合の予測値訪問数)
────────────────────────────────────
実際に放送した場合の訪問数は、Googleアナリティクスから取得できます。放送しなかった場合の訪問数の予測値は、放送前の過去のデータを用います。
たとえば、CM放映エリアの放送前の訪問数が2,000セッションだった場合、放送していなかった場合の訪問数の予測値も同じく2,000セッションとなります。
Googleアナリティクスから取得した、実際に放送した場合の訪問数が7,000セッションだった場合、テレビCMの効果の計算式は下記の通りです。
────────────────────────────────────
7,000-2,000=5,000
────────────────────────────────────
つまり、テレビCMの放映により、訪問数が5,000上がったことになります。このようにノバセルでは主に放送前後のセッション数を用いて効果測定をしています。
※CV数への寄与度も上記と同じように考えていきます。
テレビCM放送前~放送後までの想定KPIと実績KPIを下のようなグラフにすると、よりイメージが湧きやすいでしょう。予測KPIと実績KPIの折れ線の差分が、テレビCMの効果になります。
このように、ノバセルでは前述した想定KPIとGoogleアナリティクスから取得した実績値の差を算出して、テレビCMの効果を測定しています。Googleアナリティクスと連携しているため、リアルタイムで効果が測定できることも大きな特徴です。
続いて、ノバセルをご利用いただいた実際の事例と効果測定のデータを紹介します。
※※※
テレビCMとWEBのクロスチャネル分析
インターネットが発達する前は、テレビCMが視聴者に与える影響はとても大きいものでした。テレビCMが購買行動に直結していたためです。
しかし、インターネットの発展に伴い、視聴者の購買行動は変化しました。テレビCMを見た後、WEBで商材の詳細や口コミを検索してから購入する消費者が増えたのです。この変化により、テレビCM単一での効果測定ではなく、WEBとの関連性を見た効果測定が重要になります。
特にここ数年は、テレビCMでBtoBのサービスの認知度を上げる動きが加速しています。テレビCMで見たサービスを視聴者にWEBで検索させ、問い合わせまで結びつけることを狙いにしています。
ここからは、テレビCMとWEBのクロスチャネル分析に使われるデータを3つ紹介します。
指名検索数
指名検索数は、テレビCMで放映された商材名や企業名が検索された数を指します。テレビCM放映前と放映中、放映後で指名検索数にどれくらい増減があったかを測定します。指名キーワードの検索ボリュームも併せてチェックすることがほとんどです。
WEB広告など、テレビCM以外の広告を同時期に出稿していた場合は、テレビCMによる効果を正確に計測できません。指名検索数を用いて効果測定を行う場合は、出稿時期を検討する必要があります。
なお、指名検索数はGoogle広告のキーワードプランナーなどを用いることを推奨します。
WEBサイトへのアクセス数
指名検索数同様、テレビCM放映中と前後でWEBサイトへのアクセス数の増減を測定します。多くのWEBサイトが時間帯ごとにアクセス数を解析できるため、テレビCMが放映された直後のデータを測定することも可能です。オンラインショップがある場合は、商品購入数(CV数)のチェックも併せて行うことがほとんどです。
WEBサイトへのアクセス数も、テレビCM以外の広告を同時期に出稿していた場合は、テレビCMによる効果を正確に測定できません。出稿時期を加味して測定する必要があるデータです。
WEB広告などでのABテストの実施
テレビCMは、テレビを通して多くの視聴者に自社のブランディング、商材の認知を行える広告です。ただし、多額の費用をかけてテレビCMを出稿しても、正しく効果を分析できなければ目的の達成は難しいでしょう。
ノバセルが提供する「ノバセルアナリティクス」は、テレビCMの効果と改善点をリアルタイムで分析・可視化し、テレビCMの効果を最大化できる分析ツールです。膨大なデータを高速で分析処理し、専門人材が改善シミュレートからディレクションまで行うため、大幅な時間短縮と業務改善を実現できます。
ノバセルアナリティクスのみの利用も可能なため、ほかの代理店からテレビCMを出稿されている場合もぜひノバセルにお問い合わせください。