ウェザーニューズ様

気象情報を提供するウェザーニューズ様は1986年に創業され、1995年からはインターネットサービスも展開する、気象業界の中でも歴史のある企業です。そんなウェザーニューズ様が初めてテレビCMに挑まれたのは、2019年のこと。テレビCM放映後の解析データと気象情報を掛け合わせ、100種のテレビCMクリエイティブを活用しテレビCMを運用する手法は、新たなマーケティング戦略を導き出しました。2020年7月から放映エリアを拡大しまた新たなテレビCM運用にチャレンジされている同社に、テレビCMへの期待と今後の展開について伺いました。


—モバイル端末のサービスとしては既に提供開始から30年の歴史を持っていらっしゃいますが、このタイミングで初めてのテレビCM放映に踏み切った理由はなんだったのでしょうか?

まず、当社の事業紹介から申し上げますと、当社が提供させていただいているのは、主に気象情報を用いた法人向けのコンサルティングサービスと、スマートフォンアプリやインターネットを利用した個人向けの天気予報サービスの2つです。私は後者の、グローバル展開を含めた統括を担当しておりまして、今回のテレビCMに関しても、スマホアプリのダウンロード数の拡大が大きな目的でした。実は、モバイル端末のサービスとしての歴史は長く、1999年にスタートしたiモードの時代からスタートさせています。GPSで位置情報などもリアルタイムで得られることから、スマホと気象情報の相性は非常によく、順調に利用者を増やしてきました。以前はアプリのインストールを促すデジタル広告を利用していたのですが、そこで集客できる数に限界が見え始めていました。当時、アプリのダウンロード数は1700万ほど。2000万ダウンロードの壁を突破するためには、インターネットを見ている人以外の層で、かつ大きな数にアプローチが見込める媒体、つまりテレビへの露出が必要だろうと考えたのです。アプリビジネスでテレビCMを放映されている会社さんも今では少なくないと思いますが、我々もいよいよ、その領域に入っていくタイミングだなと腹をくくりました


—デジタル広告のみの施策の限界を感じた背景には、当時のマーケティングにおける課題もあったのでしょうか?


ひと言で言えば、日本の天気予報の精度ではほかのどのアプリにも負けない自信があるものの、その強みを十分に訴求できていないのではないか、という課題がありました。これは天気アプリ市場そのものの構造に関係するのですが、今、我々の市場には、当社のような天気予報専門会社のアプリに加え、大手ポータルサイトのアプリや携帯端末の純正アプリなどがあります。ただ、そのバックエンドの仕組みはそれぞれ大きく異なります。私たちは自社の予報を配信していますが、例えば大手ポータルサイトの場合は民間の予報会社からデータを購入し、それを加工して配信していますし、携帯端末の場合はアメリカの気象庁が配信している世界天気などのデータを利用して配信している。そこだけを比較すると、『気象庁よりも精度が高く、気象情報の提供を専門とする会社が配信するアプリ』を利用してもらうほうが、予報が当たる確率も高くなるはずです。しかし、多くの方は、デフォルトでスマホに入っているアプリがあれば、それをそのまま利用するだけですよね。天気予報がノーブランドのままコモディティ化してしまうことは、専門会社としては許容してはいけません。だからこそ、影響力のあるメディアを使って『天気予報のウェザーニュース』を浸透させることで、アプリを見直すきっかけを作っていきたい、という思いがありました。それでもやっぱりポータルサイトのアプリのほうが使いやすいな、携帯端末のアプリのほうがかっこいいなとなってしまったら、そこは私たちの企業努力の問題です。自分たちのサービスを見直すためにも、このタイミングでのテレビCMは必要でした。


—大きな勝負に出る、大事なテレビCMの制作・放映について、ノバセルを利用しようと決めた理由を教えてください。


テレビCMの実施を決めてから、何社か代理店に話を聞きました。そんな中、担当者がラクスルさんのテレビCMサービスの存在を知って、『想像していたよりもテレビCMが安く簡単に作れるんじゃないか』と驚いたことが、問い合わせをしたきっかけです。もともと印刷事業で革新的なサービスをしているラクスルさんのことは知っていましたので、そのラクスルさんが手掛けるCMサービスは、きっと革新的な手法に違いない、という期待も大きかったんです。

実際に担当者の方とお会いして、他社との違いはすぐにわかりました。各社から、ABテストのようなご提案はいただいたのですがラクスルさんは、非常にデータドリブンで、CMの検証ロジックやノバセルアナリティクスによるCM効果可視化などCMのABテスト検証の実現性が高いと感じ、勝ち筋を見つけた上で大きく投資していく姿勢に共感が持てました。我々もデジタルの世界で生きてきた会社ですので、データドリブンでテストを繰り返してCMを最適化していくという点がストンと腑に落ちたんです。天気予報を当てるのもテレビCMを当てるのも一緒だなと。同時に、実際にラクスル自身が自社でCMを放映されていて、事業を大きく成長させた経験値も持っていらっしゃるという点も、心強かったですね。


—今回の新CMでは、かなり複数のクリエイティブを用意し、天気や地域など、さまざまな条件に合わせて放映内容を変えていらっしゃいました。この意図についても教えてください。


一般的には、テレビCMってまだまだ1本数千万円かけて作るイメージがありますよね。なので、たくさんクリエイティブを作って条件に合わせて差し替えるなんて、普通なら無理だと思うでしょう。ただ、これまでデジタル広告をやってきた中で、クリエイティブやその日の天気によって、獲得数に大きな差がありました。ならばテレビでも同じ運用ができるのではないか、できるところまでやってみたいし、やる意味は絶対にあるだろうと考えたのです。

   

そして何より、ラクスルさんのCM制作費が、他社と比べて1桁違ったからこそ、実現したことだと思います。テストをしながら進めていくということは、当然作ってもボツになるものも出てくる。すべてのクリエイティブに数千万というお金をかけていたら、とてもじゃないですが元が取れません。かといって、良いと思うものだけに絞っても費用対効果はあまり出ないでしょう。そういう意味では、いいバランスで進めていただいたなと感じています。


—実際に放映された後、どのような効果・変化がありましたか?


まず効果としては、CMが流れるたびにダウンロード数が伸び、一気に2000万を突破しました。変化としては、アプリの中にサポーター(=ユーザー)が天気を報告してくれる参加型コンテンツがあるのですが、そのコミュニティの反応を見るのがとても楽しくなった、ということでしょうか(笑)。『ウェザーニュースもついにCMを打てるようになったか』とか、『俺の地域でも流れたよ』『うちはまだか』みたいなやりとりがあったりして、コアなサポーターの方たちにも応援してもらえるようなものになった、というのは嬉しかったです。


—今年も「ノバセル」の利用を決めた理由を教えてください。


去年の成果には満足しています。その上で、今年がどうなるか、比較してみることに意味があるだろうと考えたのが、リピート理由です。今年のチャレンジは、クリエイティブのパターンがさらに多くなっているので、そのなかでどれが一番効果的なのか、重要なキーワードやイメージはどれで、その結果、一番効果があるものを見つけ出していくことです。同時に、そのデータをどんどん可視化していく必要もある。これは、「ノバセルアナリティクス」を活用することで、放映されたテレビCMの効果をリアルタイムで測定しながらPDCAを回し、結果として最も効果的な広告投資へと繋げていきたいと考えています。ラクスルさんとのチームでどこまでやれるのか。これからが勝負ですね。


—御社のCM実績をもとに、今後ウェザーニューズの「WxTech」(ウェザーテック)と、ノバセルの「ノバセルアナリティクス」を融合したサービス展開も可能なのではないか、と期待しています。

可能性は十分にあると思います。例えば出前は天気によって需要が大きく変わりますし、ゲームやECサイトの売り上げだって、雨の日のほうが伸びる場合がある。天気によって人の消費行動は変化するので、テレビCMも天気予報と連動させて運用すれば、その効果は大きく変わるはずです。とはいえ、まずは天気予報アプリを出している身として、自分たちが成果を出さないことにはその可能性を説くことができません。我々が天気連動型CMのベンチマークとなって、他社のマーケティングに活用してもらえたらいいですね