Stasrtup Growth Partner Seminar#1「ノバセル×ダンボールワン テレビCM成功戦略とは」セミナーレポート
目次
講師
昨今のデジタルマーケティング全盛の時代に、マスへのアプローチ手法として運用型テレビ広告の関心が高まっています。
マーケティング担当者がWeb広告での限界を感じ、新たなチャネルの開拓や潜在層への認知度向上など、マスメディアの活用を前向きに検討する企業が増えてきている一方、テレビCMの効果測定のしづらさや投資コストの高さから、なかなか手を出せずにいる企業も少なくありません。
ノバセルでは成長に伴走し、サポートをさせていただいた企業様をゲストに迎え「Stasrtup Growth Partner Seminar」と題し、事例を元にしたセミナーを定期的に開催しています。
去る2021年5月12日には株式会社ダンボールワンCEOの辻 俊宏氏をお招きし、『テレビCM成功戦略とは』と題した共催セミナーを実施。
今回は、ノバセルの導入を決めた背景や運用型テレビCMを取り入れ、どのようにしてサービスグロースに繋げたのかについて紐解くセッションを、ゲストに株式会社ダンボールワンCEOの辻 俊宏氏を迎えて行いました。
6年で30倍の事業成長を達成したラクスルの運用型テレビCM
まず冒頭の第一部ではノバセル事業本部長の田部より、ラクスルが実践してきた運用型テレビCMの活用方法や施策実行にあたって抑えるべきポイントについて語りました。
2014年まではデジタルマーケティングのみを運用している状況で、当時の売り上げは7億円ほどでした。
しかし、デジタルマーケティングの限界を感じ、新たな顧客層へのアプローチが急務となっていたことからテレビCMに着目。
テレビ広告の効果の可視化や、運用改善におけるPDCAを高速で回すことを意識し、デジタルマーケティングのような運用型でテレビCMを継続したところ、6年で30倍の売り上げとなる210億円の事業規模にまで成長したのです。
「従来型のテレビCMでは、認知や好感度でしか効果を測定することができず、数値化することが難しい状況でした。そこでラクスルでは、いきなり関東圏でのテレビCMを投下するのではなく、ローカルエリアからテレビCMを始めました。また、どのクリエイティブが最適化なのかを効果検証するために複数パターンのクリエイティブを作成し、『どのクリエイティブがどのエリアや番組で効果が高かったのか』を分析し、勝ち筋を掴んでいったのです。そして、一定の効果を出せるようになった段階で、関東圏にも放映を広げ、さらなる認知度向上を図ってきました。
このように、ビジネスインパクトに直結するCPAやCPIといったKPIを可視化し、デジタルマーケティングのようにファクトに基づいた形でPDCAを回す仕組みを構築することで、ラクスルの認知度向上やサービス成長に寄与することができたわけです」
田部はテレビCMを成功させる秘訣について次のように説明しました。
「まず大前提として、提供しているサービスや商品の顧客が誰なのかがはっきりしていないと、たとえテレビCMを打ったところであまり意味がありません。『顧客に選ばれる理由』をしっかりと把握した上で具体的にテレビCMを検討する方がいいでしょう。同様に、市場規模についても抑えておく必要があります。つまり、『誰に向けて何を販売していくのか、なぜ選ばれるのか』を明確にすることが先決だということ。
テレビCMのみで全て解決できるわけではないので、事業全般を俯瞰的に捉え、立体的な戦略立案が肝となってきます。さらに、テレビCMというマス・マーケティング施策を行う手前、社内で運用を回す体制づくりも必要です。テレビCMを打ったことで、どのくらい企業のバリューアップがなされたのか。あるいは売り上げにどのくらい繋がったのかという投資対効果を追うような社内体制を持つことが何より重要でしょう」
指名検索を最重要KPIに置き、勝ち筋に沿ったテレビCMを展開
また、ラクスルはテレビCMを中心としたマーケティング施策に5年で約57億円を投じています。田部は「投資回収の概念として『リターンがあるのかないのか』を判断軸に据え、テレビCMに投資をしていった」とし、テレビCMを継続したことで得られた成果について触れました。
「テレビCMに寄せてマーケティングを行ったのも、ラクスルというブランドの認知度アップはもちろん、指名検索数の向上を最重要のKPIに置き、ユーザーに『ラクスル一択』で検索してもらえるよう意識したからでした。結果として認知率60%を獲得し、指名検索数も20倍に増えたことで『ネット印刷ならラクスル』という状況が作れました。さらに、指名検索が増えたことで、獲得効率も約半分に改善させることができた。運用型でテレビCMを継続的に展開し、勝ち筋にこだわって投資を続けたからこそ、このような成果が得られたと考えています」
最後のまとめとして、田部は勝つためのマーケティング戦略で重要な5つのポイントについてピックアップしました。
①顧客価値の設計と市場規模の把握をする
②プロダクト・プライスが揃ってからプロモーションを実施する
③全ての施策に投資回収を求める
④勝ち筋を見つけたら投資を恐れない
⑤テレビCMは顧客理解と顧客行動=効果の可視化だと捉える
Web集客の限界を感じ、テレビCMを検討するように
続いて第二部では、実際にノバセルを導入したことで、事業を大きく飛躍させたダンボールワン様の事例についてCEOを務める辻 俊宏さんにお話をいただきました。
ダンボール・梱包材の受発注プラットフォーム「ダンボールワン」は、2017年からマーケティングやECに経営資源を集中させ、売り上げを順調に伸ばしてきました。
しかし、「デジタルマーケティングを用いたWeb集客の成長率が鈍化してきていることに課題感を持っていた」と辻氏は話します。
「『ダンボール 購入』などのクエリ検索による集客は正直言って、頭打ち状態でした。また、どうしてもダンボールワンというブランド名で検索するオーガニックが増えない課題も感じていました。そこで『ダンボールのネット通販ならダンボールワン』と想起してもらうのを目指すべく、テレビCMを具体的に検討するようになりました」
ラクスルが持つ運用型テレビCMの成功メソッドを享受したかった
そして、2020年3月からモデルの貴島明日香さんを起用したテレビCMの放送を実施したわけですが、ノバセルを選んだ背景について辻氏は「もともとラクスルをベンチマークしていて、運用型テレビCMで事業成長させた成功メソッドを享受したかった」と説明します。
「そもそもTVへの投資実績がなく、かつ得られる効果が想定できないこともあり、当初はテレビCMに対して懐疑的に思っていました。また、ダンボールワンは個人ではなく法人に向けたサービスですので、個人向けメディアの側面が強いテレビでは果たして法人ユーザーの獲得効率と見合うものかどうかも疑問に思うところでした。ただ、ラクスルさんの持つテレビCMの運用ノウハウを実践し、継続して取り組めば成果を出せるのではと考え、導入に至ったのです」
事業パートナーとして伴走してくれたことも、成果に結びついた要因だった
さらに単なるクライアントとしてのお付き合いではなく、「事業成長にコミットする伴走者としてある種“事業パートナー”のような形で関わってくれたことが非常に心強かった」と辻氏は言います。
「ラクスルさんの成功メソッドをもとに、テレビCMの戦略立案やプランニングはもちろん、田部さんに経営戦略のパートナーとして伴走してもらえたのが非常に良かったと感じています。法人ユーザーの注文獲得を目的とした調査やターゲット選定、どんなクリエイティブを制作すれば売り上げ最大化を達成できるかなどを密にやりとりし、細かなチューニングをしていただいたことで、1年で指名検索数が6倍に増加することに成功しました。また、ノバセル独自のアナリティクスツールを用いることで、クリエティブや放映枠ごとの細かい成果を全て可視化できたので、ABテストの効果検証や施策の成果について素早くPDCAを回せたのも、成果に繋がった要因だと思っています」
デジタルマーケティングの限界を感じたときが、テレビCMを検討するひとつの目安
ここからは田部が、初めてのテレビCMで成果を上げるために工夫したことについて辻氏へ伺っていきます。
まず、テレビCMについて「経営者視点でどう考えているか」という質問を辻氏へ投げかけました。デジタルマーケティングに比べて、マーケティングコストは高くなるテレビCMだからこそ、どのような意思決定のもとで実施したのでしょうか。
「デジタルマーケティングを続けていると、いつかは成長曲線の鈍化が訪れるでしょう。私が考えるに、非連続の事業成長を目指す上でテレビCMは必要な投資だと捉えています。もちろん、マーケティングコストやリスクはある分、実行にあたっては緻密な戦略立てが必須になるので、十分な準備を行うことが大事です」
また、テレビCMを打つべき最適なタイミングの目安について辻氏に伺ったところ、「デジタルマーケティングをこれ以上やってもCPAが高騰すると思った段階で、テレビCMを検討した」と続けます。
「デジタルマーケティングの方が費用対効果は正直高いですし、アプローチも広くリーチできます。でも、前述したように頭打ちする時期は遅かれ早かれやってきます。SNS、YouTube広告など全てやり尽くした段階で、テレビCMを具体的に視野に入れるようになりましたね」
さらに辻氏は、実践してきた立場から「一回限りではなく、継続的にテレビCMへマーケティング予算を投資していく覚悟も大切」と説きます。
「最初からどのクリエイティブがターゲットに響くかはわからないので、いくつかパターンを用意し、まずはテレビCMを実際に打ってみるところから始めました。そこから、実際の効果を分析し、より最適化されたクリエイティブへとチューニングしていき、勝ち筋を探っていく。何度も試していくうちに、ブレイクスルーのきっかけとなる成功パターンが見えてくるので、そこまでたどり着いたら積極的に投資を心がけるのが成果を上げるのに大切な姿勢となってくるでしょう。もちろん、デジタルマーケティングに比べて1.5~2倍、投資回収の期間が長くかかるのは想定しておき、あらかじめ予算は確保しておくなどの準備もしておくとなお良いと思います」
ユーザーの解像度を高め、最適解となるクリエイティブを模索していく
最後に今回のテレビCMにおけるクリエイティブでこだわったポイントについて辻氏に語ってもらいました。
「テレビCMを実施する前に、定量調査としてユーザーインタビューを行いました。なぜダンボールワンのサービスを利用いただいているのか、改めて深掘りしてヒアリングしてみると、運営側の思い込みも多々あって、ユーザーの解像度がまだまだ低いことに気づかされましたね。『安さ』『送料無料』を訴求していたものの、それが伝わっていないユーザーもいて、クリエイティブを制作する際は『業界最安値』を強調した打ち出しを意識しました。また、エリアごとに『安さ』や『便利さ』など、ベネフィット(便益)ごとに強調させる部分を変えてみたりと、色々と試していく中で最適解を探していった状況です。
デジタルマーケティングでもそうですが、テレビCMを成功させるにも、やはり数値化が大事です。憶測ではなく、しっかりと検証した上でCPAやリピート率を意識し、KPIを追っていくことが、成果を生む近道なのではと思いますね」