ノバセルの「天気連動型テレビCM」、放送7日前からの放映枠購入が可能に
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※【Markezine】ノバセルの「天気連動型テレビCM」、放送7日前からの放映枠購入が可能に より転載
ラクスルが提供する運用型テレビCMサービス「ノバセル」は2020年11月、天候予測をもとに放映7日前からCM枠が購入できる「天気連動型テレビCM」サービスを開始。ウェザーニューズとの協業で、天候に合わせたテレビCMの効率的な活用を目指す。この新サービスについて、ノバセル事業本部 プラットフォーム推進部 部長の手塚裕亮氏に狙いを聞いた。
手塚裕亮(てづか・ゆうすけ)
ラクスル 株式会社
ノバセル事業本部 プラットフォーム推進部 部長
大学卒業後、メーカー2社にて製造、生産技術、調達・購買、通関、工場立ち上げおよび経営、システム設計などを担当。その後、製造業専門のコンサルタントを経て、ラクスルに参画。SCM担当として印刷パートナーとの関係を担い、SCM部長、印刷事業部長を歴任。2019年5月より、ノバセル事業本部長補佐兼同プラットフォーム推進部部長として事業計画、プラットフォーム設計および対外均衡を担当する。
天候に合わせて広告効果の最も高いCMを放映
−−はじめにご経歴を教えてください。
ラクスルに来て今年で5年目になります。ラクスルでは印刷事業の責任者として業務にあたってきましたが、2019年の5月にCM事業を担当することになり、「ノバセル」で事業設計と管理、メディアの統括をしています。
−−「天気連動型テレビCM」とはどのようなサービスですか。
当社のテレビCM効果分析ツール「ノバセルアナリティクス」と、ウェザーニューズの気象データ分析ツール「WxTech™️(ウェザーテック)」を活用し、天候に応じて最適なCMを放映することができるサービスです。対象エリアは全国です。
ノバセルアナリティクスで放映中のテレビCMの効果をリアルタイムに把握、WxTechを組み合わせて天候効果の影響を把握し、最適な番組とクリエイティブの組み合わせを把握・チューニングしていきます。気象によって売上や顧客獲得数が変動するクライアント向けには、ウェザーニューズの天候予測と組み合わせて、気象情報に合わせて放映番組を購入する、といったことも可能です。
サービス立ち上げのきっかけは、ノバセルでウェザーニューズ社のテレビCM放映をサポートしていたことです。2020年6月から放映開始した同社のアプリ「ウェザーニュース」のテレビCMでは、天気や地域に合わせた121種類のクリエイティブを制作し、PDCAを高速で回していくことで、最適な放映枠とクリエィティブの勝ちパターンを特定することで成果を得ることができました。
番組とクリエイティブ、天気など条件の組み合わせによってダウンロード数は、数倍から時には100倍以上に変わります。多数の条件から最適解を見つけ出しチューニングを進めたことで同社では、サービス利用開始時点の2,000万から、2,500万までダウンロード数を伸ばすことに成功しています。この結果を踏まえ、今後はこのサービスを横展開していこうと考えています。
7日前でもCM枠が購入できる仕組み
――そこで11月12日に発表したのが、最短で放映7日前から1番組ごとにCM枠が購入できる新たな仕組みですね。
これまでは一般的に約1カ月前には放映枠の購入を申し込まなければいけませんでした。ですので、すでに買った放映枠に対してどのようなクリエイティブを出していくかをチューニングしてきました。
それが今回、SAS+(スマートアドセールスプラス)などをはじめとした各局のサービスなどを活用したことで、特定の天候条件と相関して効果の高い番組のCM枠のみ購入することが可能になったということです。例えば「ウェザーニュース」の場合は、雨の日にはクリエイティブの内容に関係なく広告効果が3割近く高まることが分かっています。そうなると、ピンポイントで雨の日にテレビCMを放映できたほうが、効率が高まりますよね。
特定の天候条件と相関して効果の高い番組のCM枠のみを購入することが可能に。
121パターンのクリエイティブを高速で検証
――具体的にはどのように運用しているのでしょうか
最も顧客獲得に効くクリエイティブ×放映枠×天気の最適な組み合わせを見つけるためにWEB広告で頻繁に行われている「ABテスト」をテレビCMでも同様に行っています。
「ウェザーニュース」のCMでは、大きく分けると「アプリの機能をシンプルに訴求するもの」と「キャスターがストーリー仕立てで伝えるもの」の2種類があり、その中でエリア別に、訴求する機能の違いで計121パターンのクリエイティブを制作し、検証しました。
この大量のクリエイティブ検証を短期間で検証するために、日別で放映するクリエイティブ素材を差し替え、「ノバセルアナリティクス」でリアルタイムの獲得数、CPAデータを見ながら、最も獲得効率が良いクリエイティブ×放映枠×天気の組み合わせを抽出しそこに集中的に投資するということを行いました。
「ABテスト」のようなイメージで、最も伝わりやすいテレビCMを見極めてから大規模展開できる。
例えば、自社のネット印刷サービス「ラクスル」においてCMで行ったABテストでは、「安い」と「安心」という2つのキーワードそれぞれでクリエイティブを制作。比較的放映料金 の安いローカルエリアの枠で、月単位でそれぞれ放映しました。その結果を検証したところ、「安い」というキーワードの広告効果が高いことが分かったため、そちらのクリエイティブを全国展開しました。
また、120通り制作した「ウェザーニュース」のCMは、大きく分けると「アプリの機能をシンプルに訴求するもの」と「キャスターがストーリー仕立てで伝えるもの」の2種類があり、その中でエリア別の調整や、訴求する機能の違いでパターンがつくられています。この多数のパターンを短期で比較検証するためには、番組、クリエイティブの効果がリアルタイムにわかる状況が必要です。そのため、弊社で開発した「ノバセルアナリティクス」をフル活用してチューニングを実施しました。
テレビCMに対するイメージを変えたい
−−「天気連動型テレビCM」テレビ局側にとってもメリットがあるサービスですね。
そうですね。電通が3月に発表した2019年の「日本の広告費」の調査は、インターネットの広告費がテレビを上回り話題になりました。広告費の減少は、近年のテレビ業界の大きな課題です。
しかし我々は、テレビCMはまだまだ訴求力があると考えています。我々のクライアントへの調査でも「新規顧客の獲得を考えるときにテレビCMを考えるか」と聞くと、ほとんどの方が「考える」と回答しています。つまり、まだまだ広告主にも評価されているのです。
それなのに、なぜTVCMは使われにくいのか。その理由は、ネット広告に比べて「予算が高い」「制御できない」「効果が見えない」といったテレビCMに対するイメージの悪さです。
つまり、テレビ局はこのような広告主のイメージを打破し、広告効果を証明することで販売を維持・拡大できるはずです。いうなればTVCMのDXですね。 その流れにおいて、今回の取り組みは、ノバセルアナリティクスに続く大きな一歩と考えています。ノバセルアナリティクスによって我々はTVCMの効果を可視化してきました。今回のウェザーニューズ様の取り組みはさらにTVCMに付加価値を付け、広告主と放送局の双方が適正な価格を見極めて取引できるようになりました。
−−ノバセルの今後の展望を教えてください。
私たちのサービスで広告主はより精度の高いテレビCMを、テレビ局にはより魅力的な広告枠にするための番組づくりができるようになる、そうしたサイクルを生み出すことを目指しています。
それが実現できれば、私たちも「広告会社」という枠組みを超えて、広告業界の環境をなめらかにするプラットフォームになることができるのでは、と考えています。