【セミナーレポート】NewsPicks×ノバセル「テレビCMの未来について徹底議論 -運用型テレビCM活用最前線-」
目次
登壇者プロフィール
登壇者プロフィール
株式会社ニューズピックス執行役員CSO(Chief Strategy Officer)
杉野 幹人氏
東京工業大学工学部卒業、INSEAD MBA修了、早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程修了、博士(商学)。NTTドコモ、A.T.カーニーを経てNewsPicksに参画。東京農工大学客員教授、A.T.カーニーのCMTアドバイザー。文部科学省のリカレント教育の事業運営委員も務める。著書に「超・箇条書き」(ダイヤモンド社)等。
ノバセル株式会社 代表取締役社長 兼 ラクスル株式会社 取締役CMO
田部 正樹
1980年生まれ。大学卒業後、丸井グループに入社。主に広報・宣伝活動などに従事。2007年テイクアンドギヴ・ニーズ入社。営業企画、事業戦略、マーケティングを担当し、事業戦略室長、マーケティング部長などを歴任。2014年8月にラクスルに入社。マーケティング部長を経て、2016年10月から現職に就任。ラクスルの成長を約50億かけて事業成長を実現してきたマーケティングノウハウを詰め込んだ新規事業「ノバセル」を2018年に立ち上げ急成長を牽引。2021年12月ノバセル株式会社の代表取締役社長に就任。
700万人超の会員数を誇る経済ニュースアプリ「News Picks」成長への課題と解決策がテレビCMだった
通勤時やちょっとした隙間時間に、スマートフォンでニュースを読むこと。今や多くのビジネスパーソンにとって、日常的な習慣として定着しつつあると言っても過言ではありません。なかでも、経済ニュースは即時性に加え、社会全体の動きとの関連や事象の背景説明なども求められる分野です。
「NewsPicks」は、累計無料ユーザー・会員数約718万人に上る国際最大規模の経済ニュースプラットフォーム。有料会員数も8年で19.3万人にまで伸びてきました。日本中のニュースをキュレーションされた状態で読める、オリジナルコンテンツがある、ニュースやコンテンツに対するユーザー(Picker)のコメントが読める、40未満のユーザーが6割を占め、経済ニュースメディアとしては若年層の利用が多い…など、さまざまな特長があります。
- ニューズピックスへのクエスチョン -
「右肩上がりで成長を遂げる『NewsPicks』ですが、なぜこのタイミングでテレビCMの放映を行うことになったのでしょうか?」
「会員数増加に伴いMRRは伸びているものの、少しずつその度合いは鈍化しつつあります。さらなる成長に向けた次の一手を打つことが、経営戦略における課題でした。
成長鈍化の背景には、2つの要因があります。1つ目は『無料会員数の成長鈍化』です。オーガニック経由の無料会員獲得数が徐々に鈍化してきたので、2019年頃からデジタル広告を出稿。しかしそれでもCPAが上昇しており、また別のユーザー接点を模索していました。
2つ目はある種ポジティブな要因ですが、『無料会員のLTVの増加』です。無料会員のLTVとは、無料会員が有料会員に転換した後にいただけるトータルの収益です。私がジョインした際に課された最大のミッションは、有料会員の解約率低下とそれによるLTVの増加でした。施策としては、長期利用ユーザー向けの割引きプランを用意したり、動画コンテンツ数を増やしたことなどで、解約率が半減しました。つまりLTVは2倍に伸び、その分だけ顧客の新規会員獲得に充てるコストを増やせるようになりました。テレビCMで勝負できる土壌が整ったのです」(杉野氏)
「実は、当初のオリエンテーションでは『NewsPicks』の動画コンテンツを最大限活用したテレビCMの出稿を考えていました。特に、認知未利用層(知っているが使わない)をターゲットに据え、コンセプトを立案。『ノバセルトレンド』によって、競合他社のテレビCM分析に加え、地域別、番組別、クリエイティブ別、放送局別など細かな分類による分析とデータに基づく提案を行いました。
そもそも『ノバセル』は、ラクスルが事業会社として7年で売上42倍、CPA半減をしたテレビCMの効果可視化・運用ノウハウを事業化したもの。費用対効果がブラックボックスになったり、結果がわかるまでに時間がかかったりする従来のテレビCMの問題点をクリアし、“誰でも簡単に”使える分析サービスを提供しています。我々自身が事業会社だからこそ理解できる不安や懸念を払しょくし、ニューズピックスさんに寄り添いながら伴走することを心がけました」(田部)
後半は実際に放映した「NewsPicks」テレビCMの事例をベースに、失敗と改善からの成功プロセス、試行錯誤についてさらにうかがっていきます。
- ニューズピックスへのクエスチョン -
「パートナー選びで重視したポイントは何ですか?」
「我々と一緒に、アジャイルにPDCAを回してくれるパートナーであることです。そもそも『NewsPicks』としては、ほぼ初めてのテレビCMだったので、仮説を過信することなく試行錯誤したいとの思いがありました。また、一発勝負よりもアジャイルでPDCAを回して改善していくのは、我々自身の強みでもあると自負しています。そのうえで、ノバセルはクリエイティブ提案が非常に幅広く、メディア提案に関しても分析プロセスが高速だったのが印象に残っています。つい自分たちの仮説を過信してしまいがちなテレビCM制作において、謙虚に試行錯誤していきたかったからこそ、ノバセルがベストパートナーでした。チームの雰囲気からも臨機応変な柔軟性があり、たとえ最初は失敗しても最後は成功を導けるだろうと感じたのが選んだ決め手です」(杉野氏)
◆第一弾CMの実施内容
- 6パターンのCMを検証
- 大別すると内容は2種類
—動画訴求バージョン(決算書・パワポ・メタバース・脱炭素篇の合計4パターン)
—利用シーン訴求バージョン(ニュースを見ながら『NewsPicks』利用、同左+無料訴求の合計2パターン)
「結論から言うと、どちらのバージョンも狙う成果は得られませんでした。ただ、その中でも利用シーンに『無料』と『経済』のキーワードを訴求したCMは、キーワードがないパターンより効果が2-3倍高いという結果に。第一弾CMの効果は目標CPIから大きく乖離していたものの、動画コンテンツを軸に据えた仮説検証ができた点で実施した意義はありました」(杉野氏)
- ニューズピックス・ノバセルへのクエスチョン -
「第一弾を踏まえて見えてきた 課題は何だったのでしょうか?」
「直接的な失敗要因は、動画に対する過信でしたね。初期仮説は重要ですが、過信しすぎてはいけないと、身を以て実感しました」(杉野氏)
「当初の目論見ははずれましたが、放映中に〈無料で経済ニュースアプリが読める〉というメッセージの効果が見えたので、1週間後にはすぐに追加したんです。結果、放映最終週にはCPI改善という実績を確認するに至り、第二弾に向けてスピーディにPDCAを回せました」(田部)
「田部さんのおっしゃる通り、即座に軌道修正できたことが第二弾以降の成功につながったと思っています。私が特に印象的だったのは、最初のCM放映からほんの数時間で効果が数値化・可視化されること。正直に言うと(システムのバグなんじゃないか…?)と思うほど結果が良くなかったんですが、『ノバセル』のスピード感と明確なファクトで結果が示される点は、PDCAを回していくのに最適なサービスだと実感できました」(杉野氏)
◆第二弾CM展開前の取り組みと実施内容
- 第一弾の結果を踏まえ、〈「経済ニュースアプリ」を「無料」で読める〉をキーワードに決定
- 第一弾では競合情報に基づいて出稿番組を決定したが、第二弾では前回の結果を踏まえ「NewsPicks」ならではの勝ちパターンの仮説を立ててバイイングを改善した
—経済系番組での放映
—ターゲットを幅広く試していたのを、M2層(35~50歳以上の男性)に変更
「結果的に、第一弾と比べて第二弾は効果が大幅に上昇。CPIはほぼ半減しました」(田部)
「実は、第二弾CMのシーンを検討するうえで、プロジェクトの中で推していた一つの案があったんです。でもノバセルは試行錯誤とそのアジャイルにこだわり、その一つの仮説に応えるだけでなく、もう一つ考えていた第二の仮説まで試せるように準備してくださいました。結局、もともと優勢ではなかったそのパターンのCMの方が良い効果が出たんです。仮説の過信、決め打ちで絞って走っていたら、第二弾での成功もなかったでしょう」(杉野氏)
「ノバセルでは一発ホームランを狙うより、打席を増やして確実なヒットを狙う思想を大切にしています。限られた予算を一点に投じるより、試行錯誤しながら何度も挑戦して成功確度を上げていく。その点、『News Picks』のテレビCMに関しても、第一弾も第二弾も複数パターン試せたのが勝因につながっていると思います」(田部)
「テレビCMでありながらデジタルマーケティングのような手法、効果検証を実践できるのが、ノバセルの大きな魅力ですね」(杉野氏)
- ニューズピックス・ノバセルへのクエスチョン -
「最後に、これからのテレビCMはどうなっていくと思いますか?」
「テレビCMか、デジタルかという二択ではなく、異なる役割を担うものだと考えています。ウェブ広告が伸びているという事実はありますが、テレビCMは関東で視聴率10%の番組にテレビCMを出稿すると、15秒で400万人にリーチすることができる。これだけの規模の効果は、CMでしか実現できません。課題や戦略、狙いを真摯に見つめ、都度最適な手段を最適な手法で試していくことが大切だと思います」(田部)
「テレビCMでも真の意味でPDCAを回せると体感し、実りある経験となりました。テレビCMは結果がわかるまでに数ヶ月のタイムラグがある、直接的にテレビCMの効果を検証するのは難しいというイメージも覆りました。ですから、テレビCMに対して懐疑的な方にこそ、ノバセルのサービスを試していただくのが良いのかもしれません。『運用型テレビCM』という言葉が示す通り、データやアナリティクスなど新しい手法を実装しながら、ますます進化を遂げていくだろうと期待しています」(杉野氏)