「デジタル広告運用の最適予算配分」を阻む主な原因とは?

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デジタルマーケティングを取り巻く環境が変化するなかで、複雑性と煩雑さが増すデジタル広告運用。前回の記事では、多くの広告主がいくつもの背景により、獲得状況に合わせて最も効率的な予算配分を媒体横断でおこなう「最適予算配分」から遠のいている現状について取り上げてきました。
では、デジタル広告運用における獲得広告の「最適予算配分」を阻む具体的な原因とは何なのでしょうか。この記事では主要な3点をピックアップし、それぞれを深掘っていきます。
■獲得広告の「最適予算配分」を阻む3つの主原因
原因①:予算配分を「許容CPA」に揃えてしまい、無駄な予算消化が発生すること
原因②:追加の予算配分を「CPA」で判断してしまい、獲得効率が鈍化すること
原因③:「最適予算配分」を自力で導き出すには、膨大なパターンから探し当てないといけないこと
〈原因①〉予算配分を「許容CPA」に揃えてしまい、無駄な予算消化が発生すること
多くの広告主は、デジタル広告の予算を損益分岐点である「許容CPA(限界CPA)」までに設定する傾向があります。しかし、許容CPAまで予算を投下すると、その実施過程にあるサチュレーションポイント(摩耗ポイント)に達し、CV(=コンバージョン/成果)がなかなか増えないフェーズに突入します。その結果、無駄な予算消化が発生してしまいます。
一方で、広告主が予算設定のみを行い、運用業務そのものは広告代理店などの外部パートナーに頼りきってしまうと、広告主の社内で把握できるのは、終了後の結果レポート程度に限られてしまいます。外部パートナーに任せきる運用方法では予算消化までのプロセスが可視化されにくく、無駄を省けるような細かな予算設定・調整が難しい構造になってしまっているのです。

〈原因②〉追加の予算配分を「CPA」で判断してしまい、獲得効率が鈍化すること
デジタル広告を追加で実施する場合に起こりがちなのは、予算配分を「CPA」で判断してしまうということです。CPAをもとに予算配分をすると、サチュレーションした広告のほうが効率的に見える傾向にあることから、意図せず獲得効率が鈍化するという落とし穴にはまってしまいかねません。


※原因①・②の共通項
上記で取り上げてきた原因の①と②に共通する着目ポイントとして、「デジタルマーケティングの成熟モデル」が挙げられます。
下図のように、広告を開始したばかりの「1.初期」はCPAが高く、CVは少ないところからスタートします。「2.成長」フェーズに入るとCPAは段階的に低下すると同時に、CVは急激に増加していきます。やがて「3.安定」のステージへと移行し、CPAはさらに低下、CVも安定的に増す結果を維持します。しばらくして、「4.成熟」のタイミングが訪れると一転し、CPAは徐々に高まり、CVの成長率も鈍化していきます。これが、原因①・②で言及しているサチュレーションです。
このような、成熟期に発生する「CVを無理に獲得しようとすると、CPAが高まってしまう」というサチュレーション状態での予算投下を回避し、新しいアプローチへの転換を効率的に推進する「5.改革」が求められるなかで、「最適予算配分」を阻む3つ目の原因が待ち構えているのです。

〈原因③〉「最適予算配分」を自力で導き出すには、膨大なパターンから探し当てないといけないこと
サチュレーション時の予算投下を回避できるように、どのタイミングでサチュレーションが起こり、いくら掛ければどれくらいのCVを獲得できるかを可視化する「CV予測モデル」を割り出すことは、非常に専門性の高いアドホックな作業でモデリング工数も多大です。
さらに、それらをもとに「最適予算配分」を求めるには、2,500億パターン以上*もの予算の組み合わせから探索しなくてはいけません(*5,000万円の予算かつ、5つの媒体で按分する場合のパターン数)。
だからこそ、たとえ広告主が広告代理店に予算調整の見直しを依頼したとしても、一般的には予算が莫大なトップクライアントのみが対象で、調整回数も年に数回が限界だと言われているのです。
以上、獲得広告の「最適予算配分」を阻む3つの主原因について説明してきました。広告主やデジタルマーケティング従事者にとって、これらの悩ましい課題を解決していくことはもちろん、今後のサードパーティーCookie規制に向けて先手を打って対応していくことの重要性も一段と増している現在。これからの時代に取り組むべきデジタルマーケティングとは何なのでしょうか。次回の記事では、今押さえたいデジタルマーケティングの新思考と手法についてご紹介します。
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